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イオンの時代:なぜ未来は“バッテリー駆動”なのか

なぜ電池が重要になったのか?

世界では気候変動への懸念が高まっている。この20年間で、再生可能エネルギーの生成が急増していることが、わずかな希望だ。だが、風力発電や太陽光発電は発電量が不安定であるため、消費者が必要とするまでエネルギーを蓄えることが、次の大きな課題となっている。そのため、柔軟性を高めようとして、世界中の電力網に大規模な電池設備が出現しつつある。

2017年には、世界全体で蓄電容量が1ギガワット以上増加した。これは確かに記録的な数字だが、世界のエネルギー需要を考えると、まだ微々たるものだ。

こういった電池の仕組みは?

もちろん、ここで話題にしているのは、何本かの単四電池というわけではない。それでもおおざっぱに言えば、電池はすべて同じような仕組みになっている。

図: バッテリーの仕組み

電池を充電すると、電気エネルギーは化学エネルギーに変換される。電池の電力を使用するときには、逆に化学エネルギーが電気エネルギーに変換される。

大半の電池は、2つの電極と、「電解質」と呼ばれる化学的媒体の3つの要素で構成されている。電解質は、液体である場合もあるし、ゲルや固体である場合もある。電力を生成する際には、「アノード」と呼ばれる陰極から、「カソード」と呼ばれる陽極に電子が移動する化学反応が起きる。

電池を充電すると、このプロセスが逆になり、電子がアノードに送られる。

こうした大型電池がどれくらいあるのか?

オーロラ・エナジー・リサーチ(Aurora Energy Research)のアナリストによると、英国に設置されている大規模な電池設備の容量は500メガワット前後であり、3年以内に、さらに2倍になる見込みだという。ほぼすべての容量で、リチウムイオン電池が使用されている。

ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスBloomberg NEF)によると、世界全体の設置容量は、2020年までに50ギガワットを上回り、2040年までにほぼ1000ギガワットまで急増する見込みだ。これは、世界のエネルギー容量の約7%に相当する。

グラフ: 世界の電力貯蔵量、今後20年間で100倍増加

電池は、どのようなかたちで再生可能エネルギー革命に組み込まれるのか?

英国では、電池設備は主に、ナショナル・グリッド(National Grid.)へのサービス提供のために導入されつつある。エネルギー供給が断続的という特徴をもつ風力発電や太陽光発電の稼働開始が増えるにつれて、需要と供給を一致させるうえで、こうした補助的サービスの重要性が増している。

太陽光発電所風力発電所のそばに電池が併設されている、「ハイブリッド型」再生可能エネルギー発電所も登場している。これは、太陽光発電の経済性の面で特に重要だ。太陽光発電は正午頃にピークに達して、その時間帯の電力価格を押し下げる場合があるからだ。ハイブリッド型発電所なら、すぐに送電せずに蓄電して、後でもっと高い価格で売電できる。

オーストラリア南部など世界の他の場所では、電力網をもっと強靱にして停電を避けるという目的で電池が利用されつつある。ただし、季節間の蓄電(太陽エネルギーを夏に蓄えて冬に放出する)には、電池はまだ適しておらず、経済的な意味をなさない。

将来的には、誰もが家庭用の大型電池を持つようになるのか?

イーロン・マスクは2015年、テスラの家庭用電池を発表した時に、そうした概念を世に広めたかもしれない。だが、テスラはこの分野で最初の企業ではなかったし、最大の企業でもない。ガスボイラーほどの大きさのこうした電池は、家庭で生成されたり、電力網から送られてきたりした電気を蓄え、必要なときに放出できる。

家庭用電池の世界市場で約25%のシェアを握るドイツ企業のゾンネン(Sonnen)によると、同社の大半の顧客は、ソーラーパネルを設置しているか、嵐に見舞われた地域に住んでいて、クリーンで信頼できる予備の動力源を求めている人々だという。

「この市場はまだ、ごく初期段階にある」と、クリストフ・オステルマン最高経営責任者(CEO)は語る。これまでのところ、ドイツ、イタリア、オーストラリアのほか、米国のカリフォルニア州とハワイ州が最大の市場だ。

情報欄1: どれくらい早くバッテリーを充電できるか?

ソーラーパネルを設置している家庭の場合、売電するよりも、蓄電して消費する方が経済的に見て道理にかなっている。利用時間をさらに重視した電気料金プランが出現しつつあるので、将来的には、ピークタイムの料金を避けるために、蓄電池を設置する動機が十分生じるかもしれない。

だが、オステルマンCEOからすれば、最も胸が躍る展望は、数千個の電池をつないで「仮想発電所」として利用することだ。同氏はこれを電池の「ウーバー化」と呼んでいる。ゾンネンが所有するのではなく、許可を得て要請できるわけだ。「電力会社の規模を目指しているわけではないが、仮想発電所は、かなりの電力を供給しうる」と同氏は言う。

電気自動車の今後は?

電気自動車メーカー、フィスカー・オートモーティブ(Fisker Automotive)を創設した起業家のヘンリック・フィスカーによると、第2世代の電池式自動車が登場し始めているという。同氏によるとこのタイプの決定的な特徴は、価格の手頃さと、十分な航続距離にある。

テスラは別として、最初のモデルは約100マイル(約160km)走行するのがやっとだったが、現在の新しい電池式自動車はたいてい、航続距離が200300マイルだ。フィスカーは、「モデルの選択肢が増えるので、2020年か2021年頃に市場が活況を呈し始めると思う」と述べている。

また、フィスカーは、電気自動車が主流になるのには、超高速充電が不可欠という見解も持っている。標準的な家庭では、車1台をフル充電するのに(3キロワットのソケットで)約810時間掛かるが、(350キロワットの充電装置を使用して)これを約10分で行える、新しい公共の充電装置もある

速度: 車のバッテリー5分間の充電はどれくらいの距離になるか?

他の交通手段はどうなのか?

ロンドンの通りでは、中国の自動車メーカーBYD(比亜迪)が製造する電動二階建てバスがすでに定期運行している。また、イーロン・マスクは、電動トラックの計画を発表している

だが、重量のある交通手段では、必要とされるエネルギー密度が大きいので、電池が化石燃料に勝ることは難しい。「比較的困難なのは確かだ。だが、どんな方法であろうと、将来は電動化すると思う」と語るのは、英王立工学アカデミーの新興電池技術担当会長を務めるポール・シアリング教授だ。

すぐに皆が電動ジャンボジェット機で飛び回るようになるのかといえば、「まだそうはならない」とシアリング教授は述べる。電池のエネルギー密度と重量を考えると、おそらく短期的には無人航空機(UAV)に使用されるだけだろうという。「電動旅客機が登場するまでには長い時間が掛かると思う」

電池の製造は、環境や社会にどんな影響を与えるのか?

メーカーは必要量を減らそうと取り組んでいるが、リチウムイオン電池の主材料はコバルトだ。世界のコバルトの60%以上がコンゴ民主共和国で生産されているが、同国では以前から、社会や環境に与えるコバルト採掘の影響について懸念が生じている

電池に使われるリチウムは主に、オーストラリア、アルゼンチン、チリの3大生産国と、ボリビア、ブラジル、カナダ、ジンバブエのような新興生産国によってもたらされている。一部の生産国における水の消費や不足は、大きな懸念材料だ。シアリング教授は、コバルトとリチウムの生産について、「倫理的問題があるのは確かだ。大企業は費用を重視するだろう」と語る。

寿命が終わりに近づいている電池に起きることも、大きな課題だ。バーミンガム大学化学工学部のジョナサン・ラドクリフ博士は、現在の電気自動車に搭載された電池の性能が、車として十分優れたものでなくなった時に、電池の運命はどうなるのか懸念している。家庭用電池として第2の人生が待っている電池もあるが、数年後に市場が飽和して、再利用の経済的メリットが損なわれるのを恐れているのだ。

「英国では、再利用は実行不可能で、処理プロセスが整備されないまま、大量の廃棄電池を抱える危険性がある」とラドクリフ博士は言う。

電池の容量と寿命はなぜ限られているのか?

電池の大型化や高密度化が進むほど、蓄えられる化学エネルギーが増え、生成できる電力が多くなる。だが、電池が大型化して高密度化すれば、その分高価になり、重量が増し、充電に要する時間が長くなる。また、何かあった場合に壊れる可能性が高くなる。

電池の化学的性質と内部構造も、蓄えられるエネルギー量に影響する。リチウム電池が人気なのは、重量に対するエネルギーの比率が比較的高く、使用されていない時に充電状態を良く保つからだ。

ほとんどの機器では、電池の駆動時間は、サイズや設計、エネルギー密度、安全性、駆動する機器のエネルギー効率との兼ね合いで決まる。

携帯電話の電池についてはどうか? 古くなると劣化するのはなぜか?

大半の電池は、性能が無限にもつわけではない。充放電サイクル数も有限だ。電池劣化のプロセスは注目されている研究テーマだが、電池の使用時や蓄電時にはいくつかのメカニズムが働く。

最も一般的なのは、アノードへの物質の集積で、電池の使用時や蓄電時に徐々に析出する。同様の酸化は、カソードでも起こりうる。電池の極板が反応して時間が経つにつれて劣化するのだ。これらの効果が組み合わさって、蓄電時に利用できるリチウムイオンと極板の物質が失われていき、最大容量が減っていく。

電池が古くなるにつれて内部抵抗が大きくなることで、電力の最大出力も低下する。これが「iPhone」で問題を引き起こすプロセスだ。

電池の経年劣化を加速する要因は?

電池の使用方法や蓄電方法は、経年劣化に大きな影響を与えうる。たとえば、極端な温度にさらすと電池を損傷する可能性がある。これは、スマートフォンでも問題だが、自動車などではもっと大きな問題となる。

電気自動車の場合と同じく、電池の急速な充放電サイクルも、摩耗を進ませる。電池の電力需要がかなり高い場合は、特にそうであり、最大容量まで充電し容量がゼロになるまで放電するなど、電池の充電と使用が極端な場合も、経年劣化が加速される。

問題が起きるとどうなるのか?

サムスンの「Galaxy Note 7」の電池に、ショートして発火する欠陥があるのが明らかになったことで、電池の安全性が大きく注目されるようになった。

電池内の化学反応を何かが邪魔すると、「熱暴走」が起きることがある。熱暴走が起きると、制御できない反応が連鎖して高熱を発し、結果的にたいてい電池の爆発や発火につながる。

電気制御回路と電池の遮蔽構造などの物理的措置の両方で、様々な安全対策が講じられているので、こうした出来事は稀だ。だが、人が身につけることが多い携帯機器や、衝突に巻き込まれて電池の完全性が損なわれかねない電気自動車の場合は、特に懸念材料となる。

情報欄2: リチウムに代わるものは?

今後はどうなるのか?

各社は、電池に蓄えられるエネルギーの量を増やし、さらに製造費用を下げようと懸命に取り組んでいる。

ゾンネンのオステルマンCEOによると、価格はすでに急速に低下してきたので、今後はこれまでと同じくらいの速さでは下がりそうにないという。ゾンネンでは、2010年の操業開始時点の「キロワット時容量あたり1000ユーロ以上」から、現在の「キロワット時容量あたり約150200ユーロ」まで、価格が低下している。だが同社は、インバーターのような電子装置のコスト削減を見込んでいる。

驚異の新素材が突破口を開くまでにはしばらく時間が掛かるだろうと言うシアリング教授は、「今後10年間はリチウムイオンの支配が続く。現在の水準の生産性や技術的完成度に達するまでには長い時間を要した。何であれ、この水準に追いつくにはしばらく時間が掛かる」と語っている。

ほとんどの革新は、リチウムイオン関連が軸になるだろうとシアリング教授は考えている。エネルギー密度の向上や、電池内のコバルト量の削減によるコスト低下などだ。電池の充電速度も向上しうる、と同氏は付け加えた。

ラドクリフ博士も、リチウムイオンの支配が続くという考えに賛同している。費用と性能は、製造規模の拡大と継続的な研究によって改善するという。

今後電池は、新たな用途にも利用されるだろう。フィスカー氏は、技術が向上するにつれて、いずれは建設現場や鉱山、工業装置でも使われるようになり、ディーゼル発電機に取って代わると予測する。また、シアリング教授は、医療用インプラントのような超小型機器への導入も進むだろうと述べている。

この記事は、The Guardianのアダム・ヴォーガンとサミュエル・ギブスが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。

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