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銀ナノ粒子が活躍する「スマートファブリック」の世界

これまで、服に導電性を持たせる方法は2つあった。繊維に細い金属線を巻きつける(または、両者を縫い合わせる)か、接着させられる電気回路を表面に貼り付けるかのどちらかだ。いずれも機能に問題はなく、それらの手法はスマートウェアに採用されている。着用者の活動を追跡し、スマートフォンにデータを送信するスポーツウェアだ。

しかし、このような形で増強された布は、普通の布と同じように扱えるわけではない。高温で洗濯できない場合があるため、徹底的な洗濯が必要な医療分野などには適さず、特に電気回路が表面にプリントされている場合は、その伸縮性や手触り、ドレープも異なる。

それらの課題に対し、英国のスタートアップ、ピレタ(Pireta)がソリューションを提示している。一本一本の繊維を、厚さ2ナノメートルの銅でコーティングする新技術だ。ニット、織物と不織布、天然繊維と合成繊維など、ほぼすべての布に対応しており、普通の布と同じように折ったり伸ばしたり、曲げたりできる。

一本一本の繊維をコーティング

ピレタの創業者でもあるクリス・ハントCTO(最高技術責任者)は、英国立物理学研究所で働いていた時に、このアイデアを思いついた。

ハント氏のアイデアは、焼結という現象を応用したものだ。焼結とは、金属などの微粒子に、熱(温度は、その物質の融点よりかなり低いもの)と圧力を加えて焼き固めることで、この場合はそのなかで銀のナノ粒子が使用されている。焼結によって微粒子が結合すると、融点に達するまで変化することはない。

ハント氏は「TechRadar」の取材に対し、「当社では、織物の表面を活性化し、銀のナノ粒子の溶液に浸します」と説明している。「すると、ナノ粒子が帯電し、繊維と化学結合します。その後、織物を乾燥させると、すべての繊維に銀が付着した状態になっています。この時点ではまだ導電性はありませんが、一種の無電解反応を生じさせると、溶液中の銅が、一本一本の繊維を約2ミクロンの厚さで、さやのように包み込みます」

この処理は、製造のどの段階でも行うことができ、衣類の伸縮性や通気性に影響を及ぼすことはない。処理済みの織物に、コンポーネントをはんだ付けすることも可能だ。

また、2.4GHzの信号を伝えることができるといい、ハント氏は「例えば、救急隊員の服をつくる場合、服のどこかにアンテナを付ければ、いつでも基地局と通信できます。上着に無線機を装着する必要はありません」と述べている。

このスマートウェア技術にとっての最も大きな制約は、織物そのものが持つ制約だ。ピレタはさまざまな織物について実験してみたが、もしメーカーが摂氏40度以下での洗濯を推奨していたら、たいていはその通りだということを学んだ。

「伸縮性のテストも行いました。織物を20%伸縮させて異常がなければ、私たちの技術も大丈夫です」

医療やスポーツなど、可能性は無限大

ハントは、自社の技術に大きな可能性を見いだしている。そのひとつが医療分野だ。高齢者がスマートウォッチの代わりにスマートウェアを着用すると、心拍数の急変や転倒を感知できるといった用途などが考えられる。病棟でもスマートウェアは、入院患者の体に関して圧迫されている部分を感知して、床ずれを防ぐために利用できるかもしれない。

プロスポーツの世界にも応用可能だ。「アスリートの育成にはコストがかかるため、チームは最大の利益を得たいと考えています」とハントは話す。「ツール・ド・フランスのようなイベントでは、いろいろなウェアラブル機器が使用されていますが、モジュール式で不格好なものが多いのです」

例えば、スマートジャージーやスマートソックスをつくれば、胸部ストラップやセンサーを装着しなくても、速度やケイデンス(自転車のクランク回転数)、心拍数などを計測・送信できる。

ピレタの技術を用いたスマートウェアはまだ販売されていないが、チームは現在、商業規模での利用について、複数の企業と交渉している。詳細を明かすことはできないものの、刺激的な時間を過ごせていると、ハント氏は話している。

「シャツなどの衣類を売る企業はたくさんありますが、ピレタの主戦場に競合相手はいません。これは幸運なことかもしれません」

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この記事は、t-break Techのキャット・エリスが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。

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