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自動車の未来を支える貴金属イメージ

自動車の未来を支える貴金属

意外と知られていない自動車における貴金属の役割についてご紹介いたします。2016年1月

自動車を取り巻く環境

 鉄、アルミ、銅など多くの金属が構成部品として使用される自動車ですが、貴金属も含まれているのをご存知ですか?意外と知られていない自動車における貴金属の役割についてご紹介いたします。

 日本が誇る工業製品である自動車。その普及によって私たちは生活の向上を果たした一方、エネルギーの枯渇や温暖化、環境汚染、安全性などの問題を生むことになりました。なかでも燃費向上や排気ガスのクリーン化など地球環境保全への取り組みは著しく、1960年代にアメリカで自動車排気ガス規制がスタートして以降、厳しさを増す規制を自動車業界は都度、高い技術でクリアしてきました。2014年9月よりEU諸国で「EURO 6」が施行され、粒子状物質(PM)と窒素酸化物(NOx)の排出量がより厳しく規制されるなど、自動車にはさらなる技術革新が必要になっています。この流れは先進国だけに留まらず、自動車発展途上国である中国やタイ、ブラジル、その他の地域に対しても広がってきています。

 電気自動車、燃料電池自動車など次世代自動車の一般販売もスタートし、私たちを取り巻く自動車環境は大きな変革期を迎えています。2010年に全世界で8,000万台が生産された自動車は、2050年までには年間2億台超まで増加し、ハイブリッドを含めたレシプロエンジン搭載車も2040年の生産台数は年間1.3億台まで推移することが予想されています。拡大する自動車マーケットにおける関連ビジネスも2040年までに2010年比で40%増が見込まれています。

ブルーマップシナリオ

Energy Technology Perspectives: Mitigation Potential in Transport, Presentation COP 20 side-event, 4th December, Lima, Peru,;

http://www.iea.org/etp,

http://www.iea.org/media/workshops/2014/cop20/PHILIBERT_GAGNE_Transport_day_Lima.pdf; IEA Publishing.

Licence: http://www.iea.org/t&c/termsandconditions

自動車に欠かせない貴金属の役割

 世界中でますます拡大を続ける自動車市場において、省資源、排気ガス対応、安全・快適性の向上など、自動車に求められる要件はより厳しさを増してきています。

 近年では直噴エンジン、ダウンサイジング過給エンジン、クリーンディーゼルエンジン、ハイブリッドなどパワーユニットも多様化するなかで、燃費・出力性能のさらなる向上、過酷な環境下においても常に性能を維持し続けられる耐久・信頼性、排気ガスに含まれる環境汚染物質を減少させ無害化する環境性能などが求められています。これらの幅広い要件を満たすため、貴金属が自動車用部品として使用されています。

エンジンユニット

 自動車用部品として貴金属が最も活躍するのが自動車の心臓部であるエンジンユニットです。燃料をエンジンへ供給する燃料ポンプユニットや、燃料の残量を計測するためのセンサや噴射装置、エンジンの燃焼室内で混合気を燃焼させるための点火プラグのほか、排気ガスに含まれる環境汚染物質である炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)をそのまま放出しないようする排気ガスセンサや酸素センサ、エンジンを最適な状態で制御するエンジンコントロールユニット(ECU)、またECUが機能するために必要なさまざまな情報を検知・計測する数多くのセンサに貴金属が採用されています。

※各部品名をクリックすると詳細をご覧いただけます。

1. エンジンコントロールユニット(ECU)

各種センサから送られる情報を集約し最適な点火時期など、エンジンシステムを電子制御するユニットには半導体が用いられ、各種貴金属が使用されています。

【使用されている貴金属】半導体貴金属材料

2. フューエルセンダ

燃料タンク内にあるフロートの支点側にある摺動接点(ブラシ)と、ブラシに対向する基板によって形成され、接点の移動量を電気的に検知して燃料の残量を計測します。バイオ燃料対応や純度の低い粗悪ガソリン使用における耐久性が求められているため、ブラシや対向基板に貴金属が用いられています。

【使用されている貴金属】ばね性貴金属接点厚膜ペースト

3. アクセルポジションセンサ

アクセルペダルの変位量を電気信号に置き換えて検知するセンサ。バルブの開度調整などのエンジン電子制御トラクションコントロールや横滑り防止装置などの車両制御に使われます。

【使用されている貴金属】ばね性貴金属接点厚膜ペースト

4. スロットルセンサ

電子制御式燃料噴射装置採用エンジンやトランスミッションの制御系部品のひとつ。スロットルバルブの回転角度を検出してコンピュータへ出力します。この信号で加速燃料増量(加速時に燃料噴射量を一時的に増加)などエンジン制御をしたり、トランスミッションの制御を行います。

【使用されている貴金属】ばね性貴金属接点厚膜ペースト

5. エアフロセンサ

電子制御式燃料噴射装置において、エンジンが吸入する空気量を測定するセンサ。

【使用されている貴金属】白金系細線材料

6. 燃料インジェクタ

排気ガスのクリーン化のために、緻密な制御が要求される燃料噴射装置のピエゾ電極形成に貴金属が用いられています。

【使用されている貴金属】厚膜ペースト

7. スワールセンサ

シリンダー内に渦流(スワール)を生成させるバルブの回転角を検出するためのセンサで、燃焼速度や希薄燃焼限界を向上させ燃費をよくします。

【使用されている貴金属】ばね性貴金属接点厚膜ペースト

8. スパークプラグ

シリンダー内で圧縮したガソリンと空気の混合気を燃焼させるため、火花を起こすスパークプラグ。1分間に何千回もの点火・爆発が繰り返される過酷な環境に耐えられる性能が要求されます。先端の放電電極材に貴金属を使用することで10万キロ走行にも対応する耐久性が生まれ、スパークプラグ交換時期の大幅延長を実現しています。

【使用されている貴金属】白金系細線材料

9. 酸素センサ

触媒の前後に装着され、排気ガス中の酸素の濃度を検出するセンサ。空燃比が理論空燃比より濃い場合には電圧が発生し、薄い場合には電圧が発生しないという起電力特性をもっています。

【使用されている貴金属】厚膜ペースト

10. 排気ガス浄化触媒

ガソリンエンジンの排気ガス浄化装置として使用される三元触媒では、窒素酸化物(NOx)を窒素(N2)、炭化水素(HC)を水(H2O)と二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)を二酸化炭素(CO2)へと、三つの環境汚染物質を一つの触媒で浄化させています。

【使用されている貴金属】貴金属化合物

11. 排気温センサ

DPF(Diesel Particulate Filter、ディーゼル微粒子除去装置)および排気ガス浄化装置の触媒コンバーターなどに取り付けられ、触媒温度を検出するセンサ。触媒が正常に作動する温度域かどうかを判断するために計測します。

【使用されている貴金属】厚膜ペースト白金系細線材料

スイッチ

 パワーウインドウやエアコンなど、便利な装備に用いられる各種スイッチのオンオフや多段階スイッチ位置の検出、電気を流すためのリレー(継電器)などは、-30℃~90℃にわたる車室温の高低差などにも耐えられる信頼性の高い貴金属が利用され、またその数も増加しています。貴金属を用いた電気接点は、導電性、耐久性、信頼性などに優れ、微小電流から幅広い負荷に対応しています。

※各部品名をクリックすると詳細をご覧いただけます。

1. 回転スイッチ

ウィンカー、ヘッドライト、ワイパーなど

【使用されている貴金属】貴金属クラッド材ばね性貴金属接点厚膜ペースト

2. 押しボタンスイッチ

パワーウィンドウ、エアコン、カーステレオ、カーナビゲーションなど

【使用されている貴金属】
電気接点材料貴金属クラッド材リベット接点クロスバー接点ばね性貴金属接点

その他部品

 貴金属を使用した自動車部品は多岐にわたっています。

※各部品名をクリックすると詳細をご覧いただけます。

1. 室内ミラー/サイドミラーの反射膜

【使用されている貴金属】スパッタリングターゲット・蒸着材

2. リード線コネクタ

【使用されている貴金属】めっきプロセス貴金属素材貴金属クラッド材

リサイクル

 上記でご紹介したとおり自動車の各所に貴金属が使われており、役目を終えた自動車はリサイクルすることで貴重な資源となります。天然の鉱石1トン中のプラチナ含有量は3~7gですが、これは指輪1個分に相当し、排出ガス浄化装置で使われる触媒をはじめ自動車全体では約4台分に相当します。【回収・精製、使用済み触媒リサイクル】

田中貴金属が自動車分野で担うべき使命

 自動車のIT化、電装化が進む中、自動車部品の原材料として貴金属は今後も大きな役割を果たしていくでしょう。そして、さらなる環境対応が求められ、ますます普及台数が伸び続ける事でより多くの貴金属が必要になります。こうした自動車を取り巻く状況において自動車の製造を止めないためには、貴金属の安定供給とコストカットが重要な課題です。

 私たち田中貴金属は、今後も地金の調達から材料の加工・供給、リサイクルまでの資源循環をトータルで実現するしくみを提供していきます。また、貴金属が必要な部分にピンポイントに作用する「少貴金属化」で貴金属使用量を削減することにより、優れたコストパフォーマンスを提供できるよう、日々研究を重ねます。そして、貴金属の特性を最大限生かした新しい製品や高い技術力によって、自動車の未来に貢献したいと考えています。

*参考文献&データ

  • International Energy Agency http://www.iea.org
  • 一般社団法人日本自動車工業会ホームページ http://www.jama.or.jp/
  • 社団法人自動車技術会 自動車用語和英辞典
  • 三栄書房 自動車情報辞典 大車林