TANAKAのとりくみ

田中貴金属の環境への取り組み 日経BP社「Green Device Magazine」

貴金属のリサイクルと環境浄化を推進

貴金属のリサイクルと環境浄化を推進 消費者・社会・企業の“三方一両得”を実現

(2010年 夏)

電子機器など産業用製品に、欠かせない貴金属。限りある天然資源の貴金属を有効に活用するためには、リサイクルによる「資源循環」と、貴金属が持つ触媒の特性を最大限に生かした「環境浄化」への取り組みが重要だ。
田中貴金属グループは、この資源循環と環境浄化を、いち早く重点課題と位置付け、強化をはかってきた。
その具体的な強化策について、同社副社長の沼井芳典、取締役技術開発部門長の田中秀昌をはじめとした5人に聞いた。

座談会模様

座談会模様

田中 秀昌 田中貴金属工業 取締役 技術開発部門長

田中 秀昌
田中貴金属工業
取締役 技術開発部門長

田中貴金属グループと資源循環・環境浄化

― まずは「資源循環」と「環境浄化」の事業の位置づけから教えてください。

田中

田中貴金属グループでは「新エネルギー」「環境配慮材料の開発」に、「資源循環」と「環境浄化」を加えた4つの事業を、環境・エネルギー事業の重点課題と位置付けています(図1)。
資源循環とは主に貴金属のリサイクルです。産出量の限られた天然資源を使って産業用製品を販売している当社には、天然資源を有効活用する仕組みを作る義務があります。そこでお客様の製造現場から発生したスクラップや製品寿命を全うした廃棄物、いわゆる「都市鉱山」から貴金属を回収し、再資源化するとともにお客様にその価値を還元しているのです。
環境浄化は、貴金属を使った触媒などの開発です。特に燃焼触媒は環境に悪影響を及ぼすガスの排出削減にも効果的です。大学との連携で新しい触媒の開発にも努めています。

図1 田中貴金属グループの環境・エネルギー事業の四つの柱

図1 田中貴金属グループの環境・エネルギー事業の四つの柱 新エネルギー 資源循環 環境配慮材料の開発 環境浄化

お客様からの「信頼」で回収拡大

― 貴金属はリサイクルの重要性が増してきているそうですね。

沼井

すでにAu(金)やPt(白金)の需要は、鉱山からの生産量を大きく上回っています。2008年時点でAuの需要のうち31%、Ptは24%をリサイクルでまかなっており、もはやリサイクルなしには市場が成り立たないのが実情です。田中貴金属グループはリサイクルの重要性をいち早く認識し、その仕組み作りに乗り出しました。
リサイクルを事業として始めた最初の頃は大変でした。そもそも廃棄物に貴金属が含まれていると考えているお客様が、なかなかいませんでした。そこで、まずはお客様の現場を拝見し、貴金属が含まれていそうな廃棄物のサンプルを分析して、その結果をお見せすることでお客様に貴金属の存在を認識してもらうことから始めました。実際に、半導体製造装置ラインの掃除機のゴミやウエスまでも分析しました。こうした地道な活動の結果、お客様は廃棄物中の貴金属の存在を徐々に認識するようになりました。中には治具の洗浄液のようにお客様がわざわざ費用をかけて専門業者に処理を依頼していたものが、リサイクルで逆に儲けが出るようなケースもあり、お客様は資源回収の重要性に気づくようになったようです。その後、回収量は飛躍的に増加し、現在では田中貴金属グループの出荷量のうち、Auは13%、Ptでは43%が資源循環による回収材料で賄われています。

沼井 芳典 TANAKAホールディングス 代表取締役副社長(兼)事業戦略本部 本部長

沼井 芳典
TANAKA
ホールディングス
代表取締役副社長
(兼)
事業戦略本部
本部長

― なぜ田中貴金属グループの回収量はそこまで拡大したのでしょうか。

市石

お客様が回収物を自社の資産と見なすようになった結果、回収を担う業者の「信用」を重視するようになった結果ではないでしょうか。回収を行う業者の中には十分な分析機能を持たないために、無難に評価額を低めに見積もるところもあるようです。しかし実勢に比べて低い評価は、その分お客様に損をさせてしまうことになります。田中貴金属グループは、世界に5社しかないロンドン地金市場協会の公認審査会社の一つとして、その高い分析能力が国際的に認知されています。こうした点などから、資産を正確に評価できる業者だとお客様が評価してくださったことから、回収量の拡大につながったのだと思います。

沼井

お客様に信頼していただくために、営業部門にはいつも「お客様を工場にお連れしなさい」とハッパをかけています。工場にいらしたお客様には、工場を隅から隅までご案内しています。回収が正しく行われているという自信がなければ、そういうことはできません。

市石

商品の低価格化などで、昔に比べてものづくりで収益を上げることが難しくなっていることも、回収量拡大の背景にあると思います。製造工程のムダをなくすために、廃棄物に価値があるものが含まれているならばその価値を確実に回収し、製造コストの低減につなげたいという思いがあるようです。そこで高い分析能力で正確に評価できるという信頼を獲得している田中貴金属グループが、多くのお客様に受け入れられているのだと考えます。

市石 知史 田中貴金属工業 執行役員 化学・回収事業部 湘南工場 工場長

市石 知史
田中貴金属工業
執行役員
化学・回収事業部
湘南工場 工場長

開発段階からリサイクル見越す

― 今ではリサイクルを産業用製品以外にも広げているそうですね。

沼井

2009年6月から、一般消費者から貴金属ジュエリー製品をお預かりし、AuやPtの含有量を分析して買い取るサービス「RE:TANAKA」をスタートしました。田中貴金属ジュエリーとRE:TANAKA登録店を合わせた47店で実施しているもので、お客様が持ち込んだ貴金属ジュエリーを専用機器で鑑定し、現金に交換します。特にAuは装飾用に使われているものが多く、お客様への安定供給を続けるためにもこうした用途からの回収も重要です。まだ消費者への啓蒙段階のため、回収量はサービス開始後9カ月間でAuは2.2t、Ptは0.2tと、回収量全体に占める割合はわずかですが、限られた鉱山資源を有効活用するためにも、継続的に取り組んでいきたいと考えています。

市石

リサイクルは非効率と思われるかもしれませんが、実はむしろ効率は良い方だと言えます。Auの場合、原鉱石1tから取れるAuは3~7gなのに対し、例えばICのスクラップ1tからリサイクルできるAuは500g~1kgにものぼります。難しいのはスクラップに含まれる貴金属の正確な評価と、金利負担を抑えるために迅速にリサイクルすることなのです。その両者にノウハウを持つ田中貴金属グループでなければ、なかなか扱えない事業と言えるでしょう。

沼井

産業用でも新たな取り組みを始めています。製品開発段階から廃棄後のリサイクルを見越したご提案です。新しい組成の貴金属を使ってメーカーが新製品を開発することはよくありますが、新しい組成にはリサイクルにも新しい手法が必要です。その手法を確立しないまま出荷を始めたのでは、いずれ貴重な貴金属を含む廃棄物が滞留してしまうことになります。そこでその組成の貴金属に適した回収システムを構築し、製品出荷前にご提案するのです。お客様のコンプライアンス遵守に貢献するためにも、あらかじめ新素材のリサイクル手法を確立しておくことは重要と考えています。

佐々木

貴金属を資源としてリサイクルするのではなく、貴金属の機能をリサイクルするのも資源循環の一つです。その例が「触媒再生」です。触媒は使い続けているうちに徐々に性能が衰えてくるため、交換が必要になります。通常はそのまま廃棄に回されるところを、田中貴金属グループでは洗浄して再利用することで、中の貴金属を触媒として長く利用できるようにしています。触媒を入れ替えるよりも数分の1のコストで済み、廃棄物は減ります。いずれは再生もできなくなりますが、その際はスクラップにして貴金属として再生します。

佐々木 雅宏 田中貴金属工業 技術開発センター 技術開発部門 開発推進部 企画室長

佐々木 雅宏
田中貴金属工業
技術開発センター
技術開発部門
開発推進部
企画室長

NOxを抑制する燃焼触媒

― 貴金属の触媒としての機能を詳しく教えていただけますでしょうか。

佐々木

代表的な機能が脱臭です。特にトルエンやキシレンなど揮発性有機化合物(VOC)には効果的です。これらの排出には厳しい規制の網がかけられるようになりましたが、貴金属を使った酸化触媒を使えば、VOCを水と二酸化炭素に無害化して排出することができます。
人間が不快に感じる一般的な臭気についても、酸化触媒は効果を持ちます。例えばIHクッキング・ヒーターには、フィッシュ・ロースターからの臭気を防ぐために触媒が使われています。その他にも触媒には、大気中にあるさまざまな臭気の原因物質を分解し、簡単に無臭化できます(図2)。無臭化する素材には活性炭もありますが、単に臭気を吸着するだけの活性炭と違い、触媒は臭気を化学的に分解し無臭化、すなわち周りの環境を浄化する機能があるというわけです。

海野

酸化触媒のひとつとして燃焼触媒も環境に貢献する技術です。これは、発生したものを除外するというものではなく、そもそも発生させないというものです。例えば、ガスタービン発電機では、燃焼温度が1800℃にまで達しますが、この温度では、空気中の窒素と酸素が反応してサーマルNOxが発生します。そこで、サーマルNOxが発生しない1300~1500度にまで燃焼温度を下げて燃焼させるのが、燃焼触媒の役目です。自動車のディーゼルエンジンでも、自動車メーカーは排ガス規制の強化に対応するため、触媒による環境影響物質の排出抑制を進めています。

海野 哲也 田中貴金属工業 筑波テクニカルセンター 技術開発部門 技術開発部 触媒材料 開発セクション チーフマネージャー

海野 哲也
田中貴金属工業
筑波テクニカルセンター
技術開発部門
技術開発部 触媒材料
開発セクション
チーフマネージャー

図2 メタルハニカム触媒が持つ脱臭機能。200度でほとんどの臭気を簡単に無臭化できる

図2 メタルハニカム触媒が持つ脱臭機能。200度でほとんどの臭気を簡単に無臭化できる

― 自動車という点では、触媒を使った燃料電池車も話題ですね。

海野

環境浄化には2つの考え方があります。一つは環境に悪い物質を浄化すること、もう一つはそういう物質をそもそも出さないこと。先の燃焼触媒もそうですが、後者に該当するのが燃料電池です。燃料電池は水素と酸素から水を生成する際のエネルギーを電気として取り出すものです。ここにも触媒としてPtが欠かせません。ガソリン車を燃料電池車に置き換えれば、排出するのは排ガスから水蒸気に変わります。つまり、触媒を使った燃料電池車は、有害な排ガスそのものを出さないのです。箱根駅伝の先導車が燃料電池車に変わったのも、選手の健康を考慮したからではないでしょうか。

光だけで排水浄化の技術開発へ

― 環境浄化の事業は今後どのように強化していく方針ですか。

市石

貴金属触媒の役割は、これまで大気の浄化がメインでしたが、これを水の浄化にまで広げようとしています。そこで工場内に環境ビジネスグループを組織し、大学と協力して光触媒の技術開発に取り組んでいます。排水中の硝酸、アンモニア性窒素は、赤潮の原因の一つとされていますが、現実的な対策に乏しく、今は十分な規制がなされていません。そこで貴金属による光触媒で窒素に分解してしまおうという技術です。電気や熱などのエネルギーを必要とせず、貴金属と太陽光だけで分解できるようになれば、こうした排水の浄化は一気に進むでしょう。光の当て方などの課題もありますが、実現に向けて一つひとつクリアしていく方針です。

田中

資源循環、環境浄化いずれの事業にしても、ポイントは「消費者」「社会」「企業」のいずれにも貢献できるという点です。資源循環はお客様が持つ価値を保全し、社会の限りある資源を守りながら、供給の安定化をはかります。環境浄化はお客様のコンプライアンス遵守、社会の安全性、そして当社のビジネスのそれぞれに貢献します。今後も資源循環と環境浄化、それに新エネルギーと環境配慮材料の開発の4事業に一層磨きをかけていくことが、田中貴金属グループの責務だと考えています。

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