TANAKAのとりくみ

田中貴金属の環境への取り組み 日経BP社「Green Device Magazine」

エネルギーの革新に貢献する貴金属材料

エネルギーの革新に貢献する貴金属材料 「創」「蓄」「省」に向けた技術を続々と開発

(2010年 春)

貴金属を手掛けて125年と長い歴史を誇る田中貴金属工業。同社は、貴金属材料を提供すると同時に、その応用技術を開発することで先端産業用製品の進化に貢献してきた。その同社が、いま注力している分野が環境・エネルギー事業である。今回、同事業の四つの大きな柱の一つである「新エネルギー」の分野における主な貴金属材料の役割と、それらに関する同社の最新の取り組みについて、同社取締役技術開発部門長の田中秀昌と技術開発に携わる社員に聞いた。

座談会模様

座談会模様

田中 秀昌 田中貴金属工業 取締役 技術開発部門長

田中 秀昌
田中貴金属工業
取締役 技術開発部門長

田中貴金属グループと環境・エネルギー事業

―「新エネルギー」と貴金属の関わりは。

田中

「新エネルギー」は、「環境配慮材料の開発」「資源循環」「環境浄化」と並ぶ田中貴金属グループが推進する環境・エネルギー事業における重点課題の一つです(図1)。貴金属材料の応用分野の開拓にも取り組んでいる田中貴金属グループは、すでにエレクトロニクスの分野で数多くの実績を築いています。新エネルギーは、これに続く新規分野として技術開発や市場開拓を積極的に進めています。
新エネルギーの分野には、貴金属材料が役立つ技術が数多くあります。例えば、エネルギーを生み出す創エネルギーの領域では燃料電池や太陽電池が注目を集めていますが、いずれにおいても貴金属材料が重要な役割を担っています。創エネルギーと蓄エネルギーの両方の領域で必要な水素生成技術においても貴金属材料はキー・テクノロジーの一つです。さらに、いま社会全体で関心が高まっている省エネルギーの領域でも、様々なところで貴金属材料が役立っています。

図1 田中貴金属グループの環境・エネルギー事業の四つの柱

図1 田中貴金属グループの環境・エネルギー事業の四つの柱 新エネルギー 資源循環 環境配慮材料の開発 環境浄化

燃料電池用触媒の市場シェアは60%

― 新エネルギーの分野における貴金属材料の役割を具体的に教えて下さい。

小椋

まず創エネルギーの分野で広く注目を集めている燃料電池と太陽電池についてお話しましょう。
燃料電池は、電気化学反応を利用して燃料が持っている化学エネルギーを電気エネルギーに変換する技術で、従来の発電方式に比べて高い発電効率が得られるのが特長です。しかも、発電プロセスで排出する物質が環境に負荷を与えません。燃料電池では、水素と酸素の反応を利用しています。このプロセスで生成されるのは水です。
燃料電池には、いくつかの種類がありますが、貴金属材料が使われるのは、固体高分子形(PEFC)やダイレクトメタノール形(DMFC)、リン酸形(PAFC)です。貴金属材料は、これらの燃料電池において、水素と酸素を反応させるための電極触媒として使われています。具体的には、直径30nm程度のカーボンの粒子(担体)に、直径2nm~4nmのPt(白金)、PtCo(白金コバルト)あるいはPtRu(白金ルテニウム)の粒子が結合した材料です(図2)。
田中貴金属グループは1985年から電極触媒の開発に着手しており、これが新エネルギーの分野に進出するキッカケとなりました。現在は、固体高分子形、ダイレクトメタノール形燃料電池向けを中心に事業を展開しており、この市場では60%以上のシェアを獲得しています。さらに燃料電池の高性能化、低コスト化、耐久性向上に貢献できる触媒の開発に取り組んでいます。

小椋 文昭 田中貴金属工業 技術開発部門 FC 触媒開発部 副部長

小椋 文昭
田中貴金属工業
技術開発部門
FC 触媒開発部
副部長

図2 固体高分子燃料電池向けの触媒

図2 固体高分子燃料電池向けの触媒

太陽電池パネルの軽量化に貢献

― もう一つの太陽電池については。

榎本

太陽電池にも、いくつかの種類がありますが、それぞれの種類の太陽電池で貴金属材料が活躍しています。例えば、すでに広く普及しているSi(シリコン)結晶型や薄膜Si型では配線材にAg(銀)ペーストが使われています。太陽電池セルの裏面に設ける反射膜もAgです。このほかSiを使わない化合物系太陽電池でも、配線材や反射膜にAgが使われています。
様々な太陽電池の中で、特に貴金属材料が重要な役割を担っているのが色素増感型です。色素に光があたると電子エネルギー準位が上がり、TiO2(チタニア)電極に流れ込むことを利用した太陽電池で、Siを使った太陽電池よりも低コストで製品化できる可能性があります。そのうえ、いろいろな色調を持った色素を組み合わせることでカラフルな太陽電池を実現できることから、幅広い分野で色素増感型の実用化が期待されています。現在、この太陽電池に向けた様々な色素材料の開発が進んでいますが、そのいずれにも貴金属材料のRu(ルテニウム)が使われています。
田中貴金属グループでは、2009年から色素増感型太陽電池向けの色素の開発に着手しました。私たちは、Pt族のひとつであるRuを安定して供給できる数少ない企業の一つです。しかも、色素の原料となる有機材料と金属を融合させる技術については多くのノウハウを抱えています。こうした強みを生かして優れた材料を提供できると確信しています。当面の目標は、約10%と高い変換効率を備えた色素増感型太陽電池を実用化できる材料を開発することです。色素増感型太陽電池の市場は2012年にも立ち上がると言われています。それに合わせて技術を確立する方針です。

榎本 貴男 田中貴金属工業 技術開発部 化合物開発 グループ 副部長

榎本 貴男
田中貴金属工業
技術開発部
化合物開発
グループ
副部長

燃料電池車普及のカギを握る技術

― 水素生成技術における貴金属の役割を教えて下さい。

嶋 邦弘 田中貴金属工業 技術開発部門 技術開発部 新製品開発グループ プロジェクトリーダー 上席技術員

嶋 邦弘
田中貴金属工業
技術開発部門
技術開発部
新製品開発
グループ
プロジェクト
リーダー
上席技術員

図3 水素透過膜用Pd素材

図3 水素透過膜用Pd素材

水素は、環境にやさしいクリーンなエネルギーとして、いま注目を集めています。例えば、燃料電池車の燃料も水素です。このほか、水素を利用したエンジンの開発が進んでいます。
水素エネルギーを利用するためには、水素を効率よく生成するシステムを開発することが欠かせません。水素を生成するための材料の一つが水です。水を電気分解すれば水素が得られます。実は、水の電気分解に使う電極の主な材料が、PtやIr(イリジウム)などの貴金属です。都市ガスを改質して水素を生成するシステムが実用化されていますが、これに使われる改質器にもRu系の触媒が使われています。
もう一つ、水素を生成する技術として応用展開が期待されているのがPd(パラジウム)を使った水素透過膜です。Pdの薄膜は、水素のみを透過する性質を持っています。これを利用すると、水素を含むガスから極めて高い純度の水素を抽出することができるわけです。すでに、実用化されている技術で、実際に半導体製造に使うプロセスガスの超高純度精製などに使われています(図3)。
水素エネルギーの利用促進を図るうえで、この技術の注目すべき点は、構造をシンプルにできるので装置の小型化を図れることです。例えば、現在、燃料電池車に使う水素を製造するシステムでは、天然ガスやメタノールなどを改質したうえで、不要な成分を吸着剤で取り除くPSA法が使われています。これを、Pd膜を使って精製する方式に置き換えると、装置の容積は3分の1になります。さらに改質プロセスの温度を700℃~800℃から500℃~550℃に下げることができます。しかも、効率を30%から70%にまで引き上げることができるはずです。
この技術を使って消費者向けに水素を提供する装置を実用化するには、水素透過膜を使ったシステムの処理能力を、さらに高める必要があります。このためには10μm程度と極めて薄く、しかも欠陥がないパラジウムの薄膜を製造する技術を確立しなければなりません。薄くするほど水素の透過量を増やせるからです。田中貴金属グループでは、すでに厚さ5μmのPd薄膜を製造できる技術を実現しており、この技術を基に量産向けの水素透過膜の開発を進めています。日本で2015年から水素燃料ステーションを実用化する計画が進んでいます。これに間に合わせるのが当面の目標です。

製造工程で貴金属が活躍

― 「省エネルギー」については。

原 範明 田中貴金属販売 マーケティング部 副部長

原 範明
田中貴金属販売
マーケティング部
副部長

図4 サファイア単結晶育成に使うIrのるつぼ

図4
サファイア単結晶育成に使うIrのるつぼ

省エネルギーに向けた貴金属材料のアプリケーションの中で、これから市場の伸びが期待されているのがLEDです。明るさを維持しながら従来の白熱灯よりも消費電力を削減できることから省エネに役立つ照明用光源として、最近にわかに高輝度の白色LEDが脚光を浴びています。今後、工場、オフィスや家庭などあらゆるところで普及するでしょう。省エネに関連するLEDのアプリケーションとして、もう一つ見逃せないのが大画面液晶テレビのバックライトです。従来は、冷陰極管が使われていましたが、これをLEDに置き換える動きが急速に進んでいます。消費電力の削減に役立つからです。
実は、白色LEDを構成する材料に、様々な貴金属材料が含まれています。例えば、Au(金)、Pt他様々な貴金属材料が電極やバリアメタル、その他積層金属薄膜として利用されています。高輝度LEDでは光の利用効率を高めるために設ける反射膜を発光層の下部に設けますが、この材料はAg合金です。このほか、パッケージの封止材には、AgとSn(スズ)の合金が使われています。
LEDの構成材料の製造工程でも貴金属材料が活躍しています。例えば、LED素子の基板にはサファイヤ単結晶を使いますが、このサファイヤ結晶を育成させる工程の一つでるつぼに高融点のIrを使う必要があります。このIrを使ったるつぼは、田中貴金属工業の重要な製品の一つです(図4)。

― 新エネルギーの分野における貴金属材料の役割は多岐に広がっていますね。

田中

その通りです。しかも、その中には代替材料が存在しない用途が少なくありません。つまり重要な役割を担っているといえるでしょう。田中貴金属グループは、新エネルギーの領域における貴金属材料の可能性を拡げるための基礎技術の開発を進めると同時に、デバイス・メーカーや機器メーカーなど応用製品のメーカーの皆さんと連携を図り、それらの技術の実用化に取り組んでいます。実用化の段階では、材料の供給など様々な形で応用製品メーカーやそのユーザーの皆さんを支援する考えです。貴重な資源を有効に活用するために貴金属材料のリサイクルにも取り組んでいます。現在開発中の様々な技術が実用化の段階を迎えるにつれて、新エネルギーの分野における田中貴金属グループの存在感は一段と高まるはずです。今後の私たちの取り組みに是非注目していてください。

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