TANAKAのとりくみ

田中貴金属の環境への取り組み 日経BP社「Green Device Magazine」

貴金属材料で常に先端分野を開拓

貴金属材料で常に先端分野を開拓 いち早く環境・エネルギー分野へと応用を拡大

(2009年 夏)

各種電子機器や自動車、さらには水や空気の浄化装置など―これらにはすべて貴金属が使われている。こうした貴金属材料を常に先駆けて開発・製造してきたのが田中貴金属グループだ。124年の歴史を誇る同グループは日本の先端産業用製品の歴史とみごとに重なる。環境・エネルギー分野にも早くから注力し、「新エネルギー」「資源循環」「環境配慮材料の開発」「環境浄化」の四つを柱に、今後も貴金属の応用分野の拡大に大きく貢献しようとしている。

田中貴金属グループと先端工業分野

「貴金属はこれまでも常に先端の産業用製品に使われてきた材料。特性が安定しており信頼性も高く使いやすい点が評価されてきた」。創業は1885年と124年にもおよぶ歴史ある田中貴金属グループ。その田中貴金属工業取締役技術開発部門長の田中秀昌は貴金属材料の先進性をこのように強調する。
田中貴金属グループといえば、一般には金取引の会社という印象が強いが、同グループの手がけてきた事業分野を見ると、まさに日本の先端工業分野の発展の歴史である(図1)。

図1 田中貴金属グループが開拓してきた貴金属材料の応用市場の広がり
田中 秀昌 田中貴金属工業 取締役 技術開発部門長

身近にあふれている貴金属

創業時は両替商だったが、当時の先端産業用製品であった電球のフィラメント用電極に使われていたPt(プラチナ)を回収することから両替商を脱皮し、その後フィラメント用のPt電極の細線加工を日本で初めて手がけ量産化した。戦後は1955年に、当時電話局のクロスバー交換機用接点材料を国産化し、生産を開始した。接点にPd(パラジウム)を使った技術で競合他社と差を付けることができるようになったという。
1964年に半導体チップの実装に使うAu(金)ワイヤーを初めて国産化し、その後の半導体技術の発展に貢献してきた。現在、同グループのAuワイヤーのシェアは世界トップである。
そして今や、貴金属の応用分野は限りなく広がっている。身の回りにある電子機器の中にある半導体に使われているのはもちろん、液晶ディスプレイ用ドライバICの接続にはAu、自動車の排気ガスの浄化触媒にはPt、Pd、Rh(ロジウム)が使われている。
先端工業分野に常に貴金属材料を提供し続けてきた同グループは、脚光を浴びつつある新エネルギー・環境分野に早くから注力してきた。その環境関連事業の4つの柱である、(1)新エネルギー、(2)資源循環、(3)環境配慮材料の開発、(4)環境浄化(図2)について同グループの取り組みを具体的に紹介する。

図2 田中貴金属グループの環境・エネルギー事業の四つの柱 新エネルギー 資源循環 環境配慮材料の開発 環境浄化

燃料電池や太陽電池に採用

まず、「新エネルギー」で第一に挙げられるのが燃料電池である。燃料電池は水の電気分解とは逆の反応を起こし、そのときに発生する電流を外部に取り出して利用する電池。携帯電話機などのモバイル機器向けから、自動車、家庭用電源向けまで用途は幅広い。
燃料電池にはいくつか種類があるが、現在最も実用化が進んでいるのが、触媒にPtを用いる固体高分子形燃料電池である。一部のモバイル機器で実用化が始まっており、将来は自動車向けに市場拡大が期待されている。同グループでは20年以上前からこの技術の開発を進め、「現在、世界の燃料電池用Pt触媒のシェアは、同グループが6割以上を占める」(田中取締役)と言う。
次に新エネルギー関連で世界的に市場が急激に拡大している太陽電池も貴金属の応用市場である。太陽電池の受光面の電極には、Ag(銀)ペーストを使う。
さらに太陽電池分野では、低コストで製造できる方式として注目を集めている色素増感型太陽電池にも貴金属が有力視されている。色素増感型は、植物の光合成のように色素を使って発電する方式。その色素にRu(ルテニウム)錯体色素が使用されている。代替材料の研究も進んでいるが、特性が安定しているRuが依然有利である。

貴金属の派生としてほかの材料も

そのほか、新エネルギーというよりも、省エネルギーという方が適切だが、パワー半導体の需要が伸びている。パワー半導体は機器の省エネルギー化や制御性の鍵を握る。半導体チップの接続はAuワイヤーが一般的だが、大電流を流すパワー半導体にはAl(アルミニウム)ワイヤーの方が適している。Alは貴金属ではないが、同社の細線技術でリボン化して、高容量の電流が流れるようにした。
さらに、次世代パワー半導体として研究が進んでいるSiC(炭化ケイ素)半導体向けにもAlワイヤーは有効である。SiCは高温動作を可能にするデバイスなので、Alワイヤーは不可欠である。
このように同グループは、貴金属の代替となる材料もシーズがあれば研究し、商品化してきた。
さらにエネルギーに関連する分野としては超電導用材料にも取り組んでいる。同グループでは「接合技術にものづくりのこだわりがあり、超電導用基材の製造に用いられた新たな技術は、将来の接合技術として重要だと認識している」(田中取締役)。現在、イットリウム(Y)系の超電導用の基材を開発している。この基材は貴金属ではないが、研究開発当初Ag系材料も使っていたことから取り組んでいる。この開発を通して将来の新たな技術が誕生することを期待している。

リサイクルは創業の原点

リサイクルは創業の原点のイメージ 次に「資源循環」について見てみよう。今日、資源の再利用を目指した循環型社会が注目されているが、廃棄物を有効活用することは貴金属材料メーカーにとっては常識である。そもそも田中貴金属グループは「創業の原点が回収・リサイクルだった」(田中取締役)。
同グループのリサイクルの1例を挙げると、自動車用排ガス浄化触媒などに用いられるPtがある。Ptのリサイクルを行う日本ピージーエムという会社を、同和鉱業、小坂製錬と共同出資で設立、事業化している。
また、貴金属を購入する顧客である機器メーカーやデバイス・メーカーなどに対してもリサイクル・サービスを提供している(図3)。生産途中の不良品の回収だけでなく、めっき、スパッタリングを行った際に装置まわりについた残渣なども回収する。顧客から回収した地金(じがね)については精算手続き(「地金買取」「返却」「貴金属製品での納入」など、フレキシブルな精算方法)をおこなっている。
このような貴金属の回収・リサイクルの方法は貴金属材料メーカーによって違うと言う。そのシステムは各社独自のノウハウになっている。最終的に貴金属をどれだけ回収できるかはその貴金属会社の収益性を大きく左右するだけでなく、その会社の信用にも影響を及ぼす。
田中貴金属グループは世界の金市場で最も権威のあるロンドン金市場の登録認定機関「ロンドン地金市場協会」(LBMA)より金銀の公認審査会社となっている。公認審査会社は世界に5社しかなく、アジアでは同グループだけである。このことは、金銀市場での品質を保証するだけでなく、同グループの分析・検査技術が世界最高水準にあることの証でもあると言う。

図3 顧客に提供する貴金属リサイクル・システム

有害物質を除去し性能を向上

三つ目の「環境配慮材料」の面では、グループ工場の製造ラインや材料開発の段階から有害物質を除去し、環境に負荷を与えないような材料を開発することが重要である。
接合材料としては、Pb(鉛)を使わない材料の実用化が求められ、Au-Sn(すず)等の接合材料が携帯電話の水晶デバイス用に商品化された。今後は、はんだの置き換えとなるような用途を開拓していく。
電気回路を開閉するリレー(継電器)では、有害物質を除去して性能を向上させた実績がある。リレーは家電から車載まで幅広く使われている。そのリレーの開閉部のリベット接点材料には、特性を向上させるためCd(カドミウム)が添加されていたが、環境対応のため、Cdを無くし、同等かそれ以上の特性が出せる材料を開発したと言う。同グループのリベット接点は、車載用リレーでは世界シェアの5割以上を占めている。

空気、水など環境浄化で貢献

四つ目の「環境浄化」では、人体や環境に有害な物質を除去し大気をクリーンに保つ材料開発に取り組んでいる。
リサイクルのところで紹介した自動車の排気ガス浄化システムは、環境浄化に貢献している例でもある。
また、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds, VOC)酸化触媒も環境浄化に役立っている。自動車・家電製品などにはモーターやリレーが使われており、そのエナメル電線の製造工程でVOCを含有する排気ガスが発生する。その発生したVOCガスの浄化・脱臭するのにPt、Pdなどを使った触媒が、威力を発揮する。
一方、水に対して貴金属は、水質改善、汚染防止等に貢献している。発電所の取水口に付着する海生生物の除去や、アルカリ・イオン整水器に、チタンPt電極が使用されている。これらの技術の開発にも15年以上前から関わってきた。

ナノ微粒子の応用も推進

環境浄化には直接関係しないが、各種医療用診断製品にも同グループの貴金属が役立っている。
高純度の貴金属を作る過程で、均一性の高いナノ粒子を作成するノウハウを同グループは所有している。貴金属のナノ粒子のうち数十から数百の原子が集合したクラスターは、15nmから30nmという直径に制御できるため、生物製剤製造プロセスに導入される、ウイルスキットとして使われている。
さらに、制がん剤や、鳥インフルエンザ(H5N1型)の診断薬等、医療診断分野に貴金属ナノ粒子が使われつつある。
このように貴金属材料の応用は限りなく広がっているが、一方で、貴金属は材料コストが高いために常に代替材料が研究され競合していく宿命にある。そのために田中貴金属グループでは常に使用量を少なくするように工夫を続けると同時に、新たな先端分野の市場開拓を続けている。

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