Elements Applied Uses of Precious Metals

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AuRoFUSE™による接合技術が実現する未来

金ナノペーストを用いた半導体パッケージング技術
~低温融着・高信頼性でLED照明、パワーデバイス、MEMSを安定に

研究者・開発者

小柏 俊典 田中貴金属工業
金属材料開発部

金ナノ粒子をペースト状にした材料は、従来の銀ペースト材料と違い信頼性が圧倒的に高く、また200℃で加圧なしで作業できるため鉛フリー材料として作業コストは安くてすむ。最終的には金ナノ粒子が直接互いにくっついているため熱伝導率も銀ペーストによる銀融合よりも高く、熱を逃がしやすい。一般的には金は高価というイメージが付きまとうが、作業効率、製造装置コスト、高信頼性(高寿命)による交換コスト、性能(パワーデバイスの高出力)など総合的なメリットをコストに換算してみると、かえってシステムコストは安くなる可能性がある。

田中貴金属工業が新しい金ナノ粒子のペースト材料「AuRoFUSE」を開発、半導体のパッケージ技術への応用を提案している。接着性や作業効率の高さからパワーデバイスのダイボンディングや、WLP(ウェーハレベルパッケージング)のウェーハ同士の封止に使う事例などを想定している。
金は自然界では極めて安定しており、1000年も前の神社やお寺、文化財などに使われてきた。半導体やエレクトロニクスの世界でも同様、例えば、スマートフォンや携帯電話のプリント回路基板は「都市鉱山」、と揶揄されるほど大量に使われている。錆びない、劣化しないといった、金ならではの特性を持っているからだ。電子回路では錆びると抵抗が高まり、意図しない金属の成長があればショートに結び付く。何度も高温-低温の実使用状態を繰り返すとひび割れたり、剥がれたりすることがある。しかし、金は他の金属で見られるような経時変化はしない。何年にもわたって安定だ。
一方、電子回路の世界では有害な鉛半田を使わずに金属同士を接合する鉛フリー半田が実用化されてきた。しかし、従来の鉛半田よりも30~40℃高温で処理しなければならないという制約があった。このため、製造装置が高価になると同時に、製造プロセスも難しかった。鉛フリーでしかも鉛に近い温度で接合させることは、金属接合の大きな目標の一つであった。

200℃で接合できる金ペースト

田中貴金属のAuRoFUSEは、鉛半田の接合温度よりも低い200℃で接合できる金ペーストだ(図1)。この金ペーストには、粒径が200~400µmのナノ粒子を使っているが、このサイズが半導体チップの実装には最適だからだとしている。粒径がこのサイズよりも小さすぎると、150℃程度でネッキングと呼ぶ、ナノ粒同士がくっつきやすくなり扱いにくくなる。粒径が大きく1µm以上になると溶融温度が400℃にもなってしまい、使いにくくなる。

図1 ナノスケールの金粒子は200~400nm径が最適図1 ナノスケールの金粒子は200~400nm径が最適

従来の金ペーストでは、金の粒子を有機溶剤に溶かしこんでいるが、さらにペーストの粘度を調整するための分散剤も加えていた。ペーストの粘度が高いと使いづらく、液状ほどではなく適度な粘度が最も加工しやすい。
今回のAuRoFUSEは、粒径を200~400µmに制御し、溶剤としての界面活性剤を入れているだけだとしている。このため粘度調整に困ることはなく、使いやすい粘度にしている。基本的な考えは、表面活性剤が金粒子の表面をほどよく覆い、100℃以上の熱で簡単にはがれてくれるようにしていること。金粒子と界面活性剤とは物理的にくっついている程度であり、化学的には結合していない。このため、温度を加えると界面活性剤が簡単にはがれる。
鉛フリー半田の一つである金とスズの共晶半田と比べ、AuRoFUSEは、電気抵抗率は、1/5の5.4µΩcm(25℃)と低く、熱伝導率は3倍の150W/mK以上と大きい(表1)。つまり熱も電気も流しやすい。さらにヤング率が1/6以下の9.5GPaと低く、軟らかい材料であることを示している。軟らかい材料は応力を吸収してくれるというメリットもある。金スズ共晶材料との比較では、従来通りシリコンとのコンタクト材料に使う場合には、Tiの下地バリアメタル、PtあるいはTiWバリアメタルの上にAu電極を形成する。

表1 金(Au)ナノ粒子AuRoFUSEと従来の金スズ共晶半田の比較表1 金(Au)ナノ粒子AuRoFUSEと従来の金スズ共晶半田の比較

この金ナノペーストを使って、チップをダイボンディングする場合、基板に対して密着性や熱膨張係数の整合などを含め、Au/Pd/Ni金属を半導体チップや基板上に形成しておく。その上の搭載すべき位置にAuRoFUSEをディスペンサでAuを吐出してAu/Pd/Ni金属層の上に付着させる(図2)。そして加圧、熱処理して接合する。接合させる時間は20分程度で200~230℃。接合後1~3時間のポストシンタリングを行い、接合部分を安定化させる。

図2 Auペーストをディスペンサで吐出してチップをマウントする方法図2 Auペーストをディスペンサで吐出してチップをマウントする方法

この金ナノペーストの応用として、想定しているのはクルマのフロントライトに使うLEDヘッドライト照明やレーザーヘッドライト(参考資料1)、レーザープロジェクタ、GaNパワーデバイスなどだ。

放熱に注意を

LED照明では、多数のLEDを並べて光らせるという方法をとるが、LED照明では青色LEDに黄色の蛍光体を塗り、青+黄で白色にする。図3は、LEDチップを2個直列接続した対を12組並列接続で実装した合計24個のLEDチップを搭載したLEDランプである。ここではチップをフェースダウンでアルミニウム基板に板に搭載している。フェースダウンのボンディングパッドの下のアルミ基板とは絶縁シートで電気的には絶縁しておくが、熱だけを逃がしたいために熱伝導率の良い材料をアルミ基板とボンディングパッドとの間に挟む必要がある。LEDの熱はアルミ基板に逃がすわけで、LEDのn、pの両電極を通り外部へ放出されるようになっている。

図3 LED照明の例 青色LEDの上に黄色の蛍光塗料を塗り青と黄で白色光とする図3 LED照明の例 青色LEDの上に黄色の蛍光塗料を塗り青と黄で白色光とする

この構造LEDモジュール8基のオン・オフ試験(24Vで350mA、停止時間15分)を行った。ボンディングパッド部分を今回のAuペースト、AuSn半田、SnAgCu半田の3種類の試作品を作り、それぞれ8基ずつ試験した。AuSn半田は500サイクルで全数故障し、SnAgCu半田では、1000サイクルで3基しか生き残らなかった。そのまま3000サイクルはクリアできたが、4000サイクルでは2基しか生き残らず、5000サイクルでは全数故障した。ところが、Auペースト電極では1万5000サイクルたっても一つも故障しなかった。
レーザーダイオードは、レーザーチップの基板側の電極層として、チップ側からAuZn層、Ti層、Au層を設けておき、銅基板の上にはAu膜を形成し、Au同士をAuペースト「AuRoFUSE」で接合する。接合部分はAu同士であるから電位差を生じないため信頼性上問題になる心配はない。200℃以上で接合させ、さらにシンタリングすることによって、金ペーストに含まれる溶剤が揮発し、純粋の金だけが残り接合するため、金同士が接合することになり、非常に安定な接合となるのである。
発熱するパワーデバイスとしてGaNデバイスが有望だとしたのは、電流を横に流すデバイスだからだという。ダイボンディングにAg(銀)を用いると、ボンディングワイヤのAuとの間の電位差によって、Agマイグレーションが起こりデンドライドが成長し端子間のショートに至る恐れがある。このためAu-Au接合が望ましい。ただし、SiCトランジスタは縦に電流を流すタイプであるため、ダイボンディング剤にAgを用いマイグレーションを起こしてもショートする危険性は少ない。このためSiCデバイスにはAuでなければならないという動機は薄い。

WLPパッケージへの応用

AuRoFUSEのもう一つの応用例は、WLPパッケージの真空封止剤としての用途だ。MEMSデバイスのように、薄いメンブレン膜を形成してその静電容量やピエゾ抵抗を測定するセンサを量産する場合には、気密封止でMEMSチップをモールド樹脂内に収めている。
今後、WLPによって、より小型化と耐腐食性のパッケージができれば生体埋め込みセンサが可能になる。デバイスウェーハの上にキャップウェーハをかぶせて封止する訳だが、ウェーハとウェーハを封止するのに金で囲んでしまえば、生体内でも腐食されることはない。
田中貴金属は、印刷によって金のパターンを描く場合、パターン以外の金材料は無駄になる。このためリソグラフィによってパターンを転写ウェーハに形成し、その転写ウェーハをデバイスウェーハの金パターンに転写する技術も開発している。転写ウェーハは何度でも繰り返し使えるため、無駄にはならない。

図4 金の封止フレームは下地に沿って変形するため密封性は向上する図4 金の封止フレームは下地に沿って変形するため密封性は向上する

金パターンを封止用のフレームとして用いる場合には下地の表面が多少粗くてもその表面に沿って追従し隙間を作らないというメリットもある。金はシンタリングすることで下地に沿って変形する。図4は金を200℃,100MPaで熱圧着させることで気密封止した場合のパターン(図4右)と断面図(図4左)である。この方法は、気密封止の金フレームと、電極の金接続を同時に形成できるというメリットもあるため、将来のTSV(Through Silicon Via)による3次元ICとMEMSとの集積を容易にできるようになる。

参考資料

1. BMW i8、新型7シリーズに搭載された最新ヘッドライト「レーザーライト」がスゴい

水素エネルギーにおける貴金属の役割

新時代のエネルギーとして水素エネルギーが注目されています。その水素エネルギーを活用する上で重要なのが触媒です。触媒による化学反応で水素を作り出し、水素から電気を生み出します。貴金属はこの化学反応の活性を高めます。TANAKAはよりエネルギー効率と耐久性、経済性のある貴金属触媒の開発を進めています。

研究者・開発者

Andrew Farry 田中貴金属工業
化学回収カンパニー

半導体の未来を作る貴金属プリカーサ

半導体の技術革新には超微細化を可能にする貴金属を用いたプリカーサ(前駆体)が不可欠です。130年以上の歴史を持つ田中貴金属は、そのネットワークをより実現した豊富な貴金属資源を加工、供給することが可能です。

研究者・開発者

池田 修二 工学博士、IEEEフェロー
ティーイーアイソリューションズ株式会社 代表取締役

原田 了輔 理学博士
田中貴金属工業株式会社
化学材料開発部

SEMICON West 2017現地レポート "The key of to Miniaturization"

北米最大の半導体およびMEMS、ディスプレイ、その他関連産業の国際総合展示会「SEMICON West」。今年度、重要なテーマとして取り上げられ、今後の産業界を担う存在として期待される半導体の微細化に対するルテニウムプリカーサーの可能性に迫る。

研究者・開発者

Matt Watson Director : Business Development
Tanaka America Inc

Peter Beckman Director : Northwestern-Argonne
Institute of Science and Engineering

Lita Shon-roy Presidnt & CEO : Techcet

Veronique Pequignat Director : International Actions & Key Technologies
Grenoble-Isere Aepi

新世代エレクトロニクスの可能性を切り開く革新的なダイレクトパターニングめっき技術

この技術では、真空環境とフォトレジストが不要かつ、100℃以下の低温のプロセスで低抵抗な微細配線を、多種多様な素材に対して直接形成することが可能です。既存の金属配線形成技術では到達し得なかった、新世代エレクトロニクスの新たな領域を切り開くことが期待できます。

研究者・開発者

伊東 正浩 EEJA 事業統括部
研究開発部 ケミカルセクション

車と貴金属

車には、インジェクタやセンサ、メータ、パワーウィンドウ、ドアロック、排ガス浄化用触媒など当グループの材料を利用した製品が数多く使われています。また、水素自動車(FCV)や電気自動車(EV)などの次世代の車にとっても貴金属は欠かせない材料です。

 

 

身体に優しい手術・治療に最適な貴金属の応用と価値

いま医療の現場で最も求められているのは、新しい医療デバイスを開発することです。医療デバイスを開発するための鍵は、「医療分野」と「技術分野」の連携です。私たちは、新しい医療デバイスの素材として貴金属の特性が活かせると考えています。最新の医療デバイスに使わる貴金属素材の開発を進めています。

研究者・開発者

長谷部 光泉 東海大学医学部医学科 教授
東海大学医学部付属八王寺病院 医長
慶応大学理工学部訪問 教授

中西 千博 田中貴金属工業
医療器材推進室長

SEMICON West 2016 現地レポート "Future is Flexible"

北米最大の半導体およびMEMS、ディスプレイ、その他関連産業の国際総合展示会「SEMICON West」。今年度、重要なテーマとして取り上げられ、今後の産業界を担う存在として期待されるフレキシブルテクノロジーの可能性に迫る。

研究者・開発者

榎本 貴男 田中貴金属工業
化学材料開発部

Michel Ciesinski President & CEO
FLEXTECH GROUP

J.Devin MacKenzie Professor
UNIVERSITY OF WASHINGTON

Janos Veres Program Manager
PARC

SuPR-NaP法を用いたフレキシブルタッチパネルセンサー

田中貴金属、産総研、東京大学と山形大学の産学官が連携し、わずか0.8µmの超微細配線による透明かつフレキシブルな基板が誕生しました。

研究者・開発者

久保 仁志 田中貴金属工業
化学材料開発部

長谷川 達生 東京大学大学院工学系研究 教授
AISTフレキシブルエレクトロニクス
研究センター

私たちの生活を進化させる"スマートな繊維"

従来の伝導繊維の概念を超える、新しい方法が生み出されています。銀ナノ粒子を用いたこの技術は私達の生活をもっと豊かなものへと進化させてくれるでしょう。

研究者・開発者

Dr. Taeyoon Lee Professor
YONSEI UNIVERSITY

Dr. Jaehong Lee YONSEI UNIVERSITY

形を変えた金が教えてくれる簡便な診断方法

貴金属である金を体外診断キットに応用することで、疾患などを短時間で簡単に発見することができます。ナノサイズの金に期待される便利な診断方法とそれを可能にする技術とは。

研究者・開発者

岩本 久彦 田中貴金属工業
バイオケミカル開発部

色素増感型太陽電池がつくる未来の発電システム

近年注目が集まる再生可能エネルギー分野で、低コストと高い発電力の実現を期待されているのが、色素増感型太陽電池(DSC)です。従来の太陽電池とは異なる特徴を持つDSC。この新たな技術がもたらす未来はどんなものなのでしょうか。

研究者・開発者

瀬川 浩司 東京大学
先端科学技術研究センター
教授

内田 聡 東京大学
先端科学技術研究センター
教授